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トップページ > ニュース > 学会からお知らせ > 2006 > 2006-08-26 > 「惑星の定義」に関する声明文

「惑星の定義」に関する声明文

2006年8月26日

「惑星の定義」が意味するもの

日本惑星科学会   

2006年8月にチェコのプラハで開かれた国際天文学連合(IAU)総会において、新た に「太陽系における惑星の定義」が採択されました。その結果、冥王星を「惑星 」のカテゴリーからはずすことになりました。この件に関して日本惑星科学会は 以下のように考えます。


-- なぜ今、「惑星」の定義や冥王星の問題が浮上したのか?

冥王星は1930年の発見当時は地球質量の1/10以上の質量を持つと推定され、問題 なく「太陽系第9惑星」とされました。ところが、1978年に衛星カロンが発見さ れたことなどにより、実は地球質量の2/1000の質量しかないことがわかりました 。このように惑星としてはあまりに小さいことがわかってきたのですが、1天体 の例外として、惑星に残されてきました。

ところが、この十年間で、太陽系や太陽系外の惑星系についての知見が急激に深 まってきました。観測技術の飛躍的向上によって、1992年になって、冥王星とは 別の海王星以遠の天体[TNOs(Trans-Neptunian Objects);和名は検討中] がはじ めて発見されました。その後1000個以上ものTNOsが発見され、その中には、2003UB313 のように冥王星クラスの大きさをもったものもどんどん発見されてきました。冥 王星ひとつを「例外」として片づけておくわけにはいかなくなってきたのです。

一方で、コンピュータ・シミュレーションの発達などにより、太陽系の天体がど のようにして生まれたのかが、ずいぶんわかってきました。どうも冥王星をはじ めとした TNOs と、その他の太陽系惑星の形成過程は異なり、そのことが TNOs と他の惑星の質量の違いや軌道の違い(TNOsの軌道は歪んで傾いている傾向にあ るが、他の惑星は円軌道で傾いていない)に反映しているようだということがわ かってきたのです(解説文参照)。

このような状況のもと、科学者は「惑星」とは一体何なのか、冥王星は「惑星」 と呼ぶべきか、整理し直す必要に迫られるようになったのです。今回の議論がは じまった背景にはこのような経緯があったのです。


-- なぜ「惑星」の定義案が二転三転したのか?

惑星の概念をどう整理するのかには、いろんな考えかたがあります。正しいとか 間違っているとかではなく、どの整理の仕方がよりわかりやすく合理的なのかを 科学者たちは、いろいろな観点で徹底的に議論しました。二転三転したのは迷走 したのでもなく、政治的思惑のせいでもなく、科学者たち全体の理解を深めるた めのプロセスだったわけです。

国際天文学連合 (IAU) 総会で最終的に決まった惑星の定義は

  1. 太陽を周回する天体で、
  2. 自己重力が固体強度を上まわって球形になり、
  3. (合体または重力散乱で)自分の軌道の周囲から他の天体をきれいになくし てしまったもの。
ですが、当初はシンプルな(1)+(2)で考えようという案が提出されました。できる だけ基本的な条件だけ課すというのも、ひとつの考え方です。その場合は冥王星 、セレス(最大の小惑星), 2003UB313なども該当することになります。また、母 惑星の1/8もの質量を持つカロンを衛星でなく双子の惑星とみなすならば、カロン も(1)+(2)に該当することになります。

しかし、最近では次々と大型のTNOsが発見されているので、(1)+(2)という案では ,今後その条件を満たすかどうか微妙な天体が多数発見されて、かえって混乱す る恐れが懸念されます。

さらに、それらの天体と他の太陽系惑星の間の大きな質量差や軌道の違い、そし てそれらのことが形成過程の違いを反映している可能性を考慮して、冥王星、セ レス、2003UB313といった天体と他の太陽系惑星はわけて考えるのが妥当ではない かという意見がでてきたわけです。

その結果、(3)の条件も付加され、(3)に該当しない冥王星は太陽系惑星のカテゴ リーから、はずれることになったのです。


-- 冥王星が惑星からはずれた影響は? 冥王星は「格下げ」されたのか?

「格下げ」という言葉は状況を正しく捕らえていません。新たに採択された解釈 は、冥王星を「太陽系最小の惑星」ではなく「多数の小天体群(TNOs)を率いる リーダー」とみなそうというものです。TNOsはこれからどんどん新しい仲間が発 見されていくでしょう。冥王星はそのリーダーなのです。冥王星が惑星からはず されて夢がなくなったのではなく、冥王星は新しいカテゴリーの太陽系天体のリ ーダーとなり、新しい世界の入口になるという新たな夢を切り開くことになった のです。もしかしたら、その中には、逆に小天体群のメンバーとはとても考えら えないほど大きい「惑星クラス」天体もあるかもしれません。冥王星を介して夢 はひろがっているのです。


-- これからどうなるのか?

冥王星が率いるTNOsは今後どんどん発見され、そのことは、彗星なども含めた太 陽系の全体像を明らかにしていくでしょう。さらに、それらの天体の分布には、 太陽系がどのように形成されたのかの痕跡が記録されているはずです。太陽系の 歴史を詳細まで読み解くことができるかもしれません(解説文参照)。

今回の議論は、太陽系「内」においての惑星の合理的定義を考えたものでした。 実は太陽系の「外」、他の恒星も惑星系をもっていることが、この10年で明ら かになってきました。1995年以来、200個もの太陽系外の惑星が発見されており、 それらは実に多様な姿をしていることがわかってきました。たとえば、冥王星や セレスなどよりもはるかに 歪んだ軌道を持つ巨大惑星も多数発見されています。

それら太陽系外の惑星も含めて、「惑星」とは何なのかという問題を、科学者は 今後も考えていくことになるでしょう。それは別の見方をすれば、われわれの地 球はどのような星なのかを明らかにすることにもつながっていきます。

20世紀初頭までは、天文学は太陽系の惑星の学問であったと言えます。その後 、天文学は太陽系を越え、銀河系を越え、137億年前の宇宙創生まで迫りました。 ところが、今、再び天文学の最前線に惑星が戻ってきていて、惑星が熱く語られ るようになってきました。今回の惑星の定義見直し問題が浮上したのは、その一 端なのです。

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