TV会議 衝突勉強セミナー14[前期]
今期セミナーのコンセプト今年度(平成26年)の勉強会は小惑星の形成・進化に関連する衝突現象について理解する俯瞰的な知識を身につけることを目的としています.
前期は「小惑星の形成と内部進化」,後期は「小惑星の表層進化」にそれぞれ焦点を当て,関連する基礎的かつ重要性の高い論文を選定しました. 昨年度と同様に学生を主な対象としています.ポスドク以上の研究者の皆さんには,是非とも学生への助言等でお力添えを頂ければと考えております. [勉強会の目的] ・「衝突研究をする以上,知っておくべき教養」の全体像を提示し,衝突勉強会に参加する学生全員の知識レベルを,その水準まで引き上げる. ・「全員が主体的に参加できて,勉強になる」会にする. [内容] ・ 全3回. ・ 各回に一つの「衝突に関するテーマ」を設定し,余りに細かい事まで触れることはせず,要点を上手くまとめて紹介する. ・ 毎回の勉強会終了後には「テーマに関する論理の概略」を全員が共有出来ているレベルにまで参加者の理解を引き上げる. ・ 全3回の勉強会が終了した時点で,参加者全員が今期定めたテーマに関して俯瞰的に理解できていることを目指す. [会のイメージ] ・<発表者>論文を読み,論理を整理する能力・内容を分かりやすく発表する能力を涵養する.(主に修士の学生) ・<聴講者>一方通行な知識の習得ではなく,積極的に議論に参加することで各テーマについての理解を深める. ※<博士課程の学生>発表者の準備補佐を通して,論理構造の整理・指導能力を身につける. 第1回日時:6/4 (水) 17:00-19:00
テーマ:小惑星形成と進化(レビュー) 紹介者:辻堂さやか(神戸大),大村知美(神戸大)・・・ 発表資料 論文:Aspahug (2009) Growth and Evolution of Asteroids, Annu. Rev. Earth and Planet. Sci. 要旨:小惑星は地球型惑星の前身であり、多様性があり興味深い。小さい真っ黒なものや、遊園地の乗り物のように回るもの、惑星のコアが破壊されてできた犬の骨のような形のものからセレスやベスタなどの大きなものまである。地球近傍には破片のようなものや岩塊など驚く程多様な天体が存在する。小惑星を集積しなかった残りとみなすと、言うならば太陽系パン屋の床に散らばっているパン屑のようなものだが、小惑星の多様性を存分に味わえるだろう。トルストイの言葉を借りると、「集積した惑星はどれも同じようなものだが、集積しなかったものはそれぞれに違う」ということだ。 本論文では主に以下の内容についてまとめている。 ・ 小惑星の分類、個数分布、サイズ分布 ・ 太陽輻射効果による軌道進化 ・ 実際の小惑星探査、観測から得られたデータ ・ 惑星形成論 第2回日時:6/25 (水) 17:00-19:00
テーマ:ダストの付着成長 紹介者:原田竣也(神戸大)・・・ 発表資料 論文:Beitz et al. (2012) Free collisions in a microgravity many-particle experiment - 2: The collision dynamics of dust-coated chondrules, Icarus. 要旨:太陽系形成初期段階での微惑星の成長は,特にミリメートルサイズ以上のダスト 凝集体の成長に関して理解が乏しい.実験室での結果から,これらの付着は非常 に小さい速度でしか生じないことが示されている.一方,原始太陽系円盤の至る 所にはミリメートルサイズの粒子が存在していたことがわかっており,この名残 がコンドライト内のコンドリュールであると考えられている.多くのコンド リュールの周りには,ダスト粒子が集積してできたと考えられる細かい粒子から なるリムが存在している.このようなリムを持つコンドリュールが,コンドライ トや微惑星を形成する際の影響を調べるため,ダストで覆われたミリメートルサ イズのコンドリュール模擬物の低速度(数cm/s)衝突実験を行った.直径2, 3 mmのガラスビーズ周囲を充填率0.18及び0.35-0.58のダストで覆う実験の場合, その付着速度は同サイズのダスト凝集体のそれよりも大きかった.また,ダスト 凝集体とダストの覆いのないガラスビーズとの衝突についても解析した.この 際,同じ物同士の付着は見られず,異なる種類での場合でしか付着は起こらな かった.このことから,二成分の違いが付着効果を高めており,コンドリュール が原始太陽系において天体成長の触媒だったと考えられる. 第3回日時:7/23 (水) 17:00-19:00
テーマ:空隙率を考慮したカタストロフィック破壊 紹介者:羽倉幸一(東京大)・・・ 発表資料 論文:Jutzi et al. (2010) Fragment properties at the catastrophic disruption threshold: The effect of the parent body’s internal structure, Icarus. 要旨:本論文は数値計算を用いて、空隙の有無がQD*と示されるターゲットの質量の半分が脱出する時のカタストロフィック破壊の閾値に影響を与えるかに注目している。その結果、強度支配域では、強度が同じでも空隙のある物質は空隙のない物質に比べ、破壊しづらいことがわかった。そして重力支配域では、空隙のない物質のQD*の値は材料強度に依存するが、空隙のある物質のQD*の値は材料強度に依存しないことがわかった。つまり重力支配域では、空隙のある物質とない物質のどちらが破壊しやすいのかは一概に言えないことがわかる。 updated: 2014/7/28 |