2022年度学会賞選考委員会委員長 寺田 直樹 (東北大学)
日本惑星科学会2022年度「最優秀研究者賞」は、2023年1月に募集要項を公表し、2023年2月に応募受付を始め、2023年3月27日に応募を締め切りました。応募者は3名でした。
応募者3名について、研究の独創性・先駆性、業績、発展性、惑星科学への寄与、学会への貢献などの観点から審査を行いました。各選考委員が応募書類を精査した後、2023年4月27日に全選考委員が参加して審査を行いました。各委員からの評価意見とそれを元にした総合的な検討の結果、学会賞選考委員会は野津翔太会員を受賞候補者として選び、それを運営委員会に報告し承認されました。
受賞者
氏名: 野津 翔太 (のつ しょうた)
所属: 理化学研究所開拓研究本部 (現在は東京大学大学院理学系研究科)
以下に、学会賞選考委員会による評価等を紹介します。
野津会員は、原始惑星系円盤を中心に、巨大ガス惑星大気や原始星エンベロープの化学過程の理論研究を推進してきました。惑星形成環境の進化を理解する上で本質的に重要な課題に取り組み、スノーラインの位置を制約する新たな観測指標を提案するなど、先駆性と発展性に富む数々の優れた成果をあげてきたことが高く評価されました。特にスノーラインの位置推定は、原始惑星系円盤における揮発性物質の化学進化や有機物分布の理解に直結し、観測と理論の双方向からのアプローチによって当該分野の一層の発展に寄与することが期待されます。また、昨今の始原天体サンプルリターンで取得される物質科学的な情報の理解にも役立つことが見込まれ、高い波及効果が期待されます。自らALMAの観測提案を行い、GREX-PLUSなどの次世代天文衛星の主要サイエンスに取り上げられる観測提案を行うなど、手法横断的に原始惑星系円盤の性質を明らかにしようとする研究姿勢も高く評価されました。今後、自らの理論予測をもとにしたスノーラインの検出という観測成果をあげ、惑星形成論の新たな地平を切り拓いていただくことを期待しています。
以上の点を踏まえ、学会賞選考委員会および運営委員会は、野津会員を2022年度の最優秀研究者賞にふさわしい方であると判断しました。
最後に、今回の選考において惜しくも受賞に至らなかった方々もその研究は高い水準にあり、選考は難航を極めたことを、付言させていただきます。受賞者をはじめ応募者全員が、今後も日本惑星科学会の中核として大いに活躍してくれることを期待しています。
2023年5月22日