トップページ > ニュース > 学会賞 > bestpr-2017 > 最優秀発表賞選考経過の講評
選考委員会委員 門野 敏彦(産業医科大学)
今年度は9名の応募があり,予稿に対する予備審査の結果,9名全員を本審査対象とすることにしました。秋季講演会初日(9月27日)午前の最優秀発表賞セッションと夕方のポスターセッションにおいて審査対象者9名が口頭発表およびポスター発表を実施し,同日夕刻に開催した選考委員会および運営委員会において慎重に審議した結果,2017年度最優秀発表賞受賞者は野津翔太さん(京都大学,講演タイトル「ALMA分光観測による原始惑星系円盤のH2Oスノーラインの同定可能性」)とすることを決定しました。
野津さんは,「スノーラインはどこか」という惑星系形成の大問題に真正面から挑んでおり,近似を排除しできるかぎり精密な理論モデルを根拠としてALMAによって直接観測する可能性を示され,観測提案中です。まだ実証データは示されていませんが,聞く人に今後の観測結果が待ち遠しい,とおもわせる内容でありました。
野津さんの発表は,多岐にわたる内容が,よく頭の中で整理されていることがわかるものでした。また質疑では相手のレベルに合わせた答えを的確に述べていました。口頭発表はやや詰め込みすぎという感もありましたが,豊富な内容を12分で収めなければならないことや,やったことを出来るだけ言いたい,という気持ちの表れとして前向きにとらえる意見も多くありました。選考委員会は,このような発表を評価し,研究の今後の展開を期待させる内容と合わせ,野津さんが本賞にふさわしいと判断しました。
今年は昨年を大きく上回る9名の応募があり,しかも全ての応募者の発表レベルは極めて高く,選考委員会は大変紛糾しました。一般向けの導入・背景の説明から始めること,スライドはきれいで簡潔,グラフの横軸・縦軸を必ず説明すること,決められた発表時間をきっちり守ること,ポスター全体の流れが見やすいレイアウトなど,発表の基本が皆さん出来ていました。残念ながら受賞には至らなかった方も,今回,口頭とポスター発表にじっくり時間をかけて考え練習したことは,発表技術の向上だけでなく今後の研究の発展に必ずつながるはずです。是非,来年度以降も資格がある方は,発表時間も一般より長く聴衆の関心も高いので,発表賞に再チャレンジしていただきたいと思います。
来年度以降も,多くの学生会員からの応募を歓迎します。
受賞者からのコメント
この度は日本惑星科学会2017年秋季講演会において最優秀発表賞に選ばれたとの事で、驚きと共に大変光栄に思います。
共同研究者の皆さまを始めとして、日頃様々な面でお世話になっている皆さまに心から感謝申し上げます。
今後も理論計算・観測の両面から研究を深め原始惑星系円盤のH2Oスノーラインの位置決定に取り組むと共に、星・惑星形成過程の解明に微力ながら貢献できる様、頑張りたいと思います。