2023年度学会賞選考委員会委員長 黒川 宏之 (東京大学)
日本惑星科学会2023年度「最優秀研究者賞」は,2024年1月に募集要項を公表し,2024年2月に応募受付を始め,2024年3月25日に応募を締め切りました.応募者は2名でした.
応募者2名について,研究の独創性・先駆性,業績,発展性,惑星科学への寄与,学会への貢献などの観点から審査を行いました.各選考委員が応募書類を精査した後,2024年4月23日に全選考委員が参加して審査を行いました.各委員からの評価意見とそれを元にした総合的な検討の結果,学会賞選考委員会は田崎亮会員を受賞候補者として選び,それを運営委員会に報告し承認されました.
受賞者
氏名: 田崎 亮 (たざき りょう)
所属: グルノーブル・アルプ大学
以下に,学会賞選考委員会による評価等を紹介します.
田崎会員は,原始惑星系円盤におけるダストの光学特性や物理的挙動,輻射輸送過程の理論研究を推進してきました.そうした理論研究をもとに,原始惑星系円盤の観測データの解釈や将来観測への指針を与えてきたこと,それらの成果を着実に査読付き論文として発表してきたことが高く評価されました.特に,微粒子の集合体であるダスト・アグリゲイトの光学的性質の精密なモデリングに取り組み,自ら原始惑星系円盤観測データに適用することで,ダスト・アグリゲイトの振る舞いを理解する上で重要となる空隙率やモノマーサイズといった物理量を制約したことは,微惑星形成過程の解明に対する大きな貢献と言えます.また,田崎会員は,共同開発した汎用ダスト光学特性計算コードや数値計算結果のデータベースを公開しており,原始惑星系円盤や惑星大気,彗星塵などの様々な惑星科学研究分野で活用されていくことが見込まれます.今後,惑星形成過程の理論と原始惑星系円盤の観測を総合する学際的な研究を先導する,さらなる活躍を期待します.
以上の点を踏まえ,学会賞選考委員会および運営委員会は,田崎会員を2023年度の最優秀研究者賞にふさわしい方であると判断しました.
最後に,今回の選考において惜しくも受賞に至らなかった方もその研究は高い水準にあり,選考は難航を極めたことを付言させていただきます.受賞者をはじめ応募者全員が,今後も日本惑星科学会の中核として大いに活躍してくれることを期待しています.
2024年5月31日