選考経過の講評
2013年度選考委員会委員長 林祥介(神戸大学)
日本惑星科学会2013年度「最優秀研究者賞」は、2013年11月に募集要項を公表, 2014年1月に応募受付開始, 2014年2月27日に応募を締め切り、4名の方より応募がありました. 4名の方について,研究業績,惑星科学への寄与,将来にわたって惑星科学会の中核となって活躍が期待できるか等を審査し,2014年4月1日に審査委員が集まって議論しました.各委員からの評価意見の提案とそれを元にした総合的な評価検討の結果,奥住聡(おくずみさとし)会員を最優秀研究者賞受賞者とするこ とになりました. 受賞者
氏名: 奥住聡(おくずみ さとし)
以下に,審査委員による評価等を紹介します. 奥住会員は,惑星形成理論,特に,微惑星形成と原始惑星系円盤の乱流状態に関する理論的研究に取り組んできました.惑星形成環境における重要な量の一つである,ガスの電離度の簡便な計算法を開発,これにより原始惑星系円盤におけるダスト微粒子の成長に対する静電障壁を発見し,ダスト微粒子の成長が従来考えられているよりも大幅に遅れることを指摘しました.また,そのダスト微粒子が成長したダストアグリゲイトの内部構造進化の数値モデル化を行い,ダストアグリゲイトの内部密度進化が空気力学特性を変化させ,衝突合体により「ダスト落下問題」を回避し微惑星まで成長できることを示しました.さらに,原始惑星系円盤の磁気乱流について研究を行い,惑星形成が進行するためには円盤を貫く大局的磁場がある値よりも小さい必要があることを示しました.この条件が満たされない場合,ダストアグリゲイトは高速で衝突し破壊してしまい,微惑星は形成されないことになります.現在はこれらの研究の実証を目指して観測可能性について研究を行われています.今後,惑星形成理論と観測との強いリンケージを構築してくれることが期待されます. こうした研究の質および国際的評価に加えて,学会賞選考委員会は,奥住会員が
を特に高く評価しました.以上のような研究業績と研究者としての資質・将来性に加え今後の惑星科学会・コミュニティーへの寄与をも期待し,奥住聡会員を2013年度日本惑星科学会最優秀研究者賞の受賞者に決定いたしました. なお,2013年度,惜しくも受賞に至らなかった候補者の方々も,最優秀研究者賞候補にふさわしい研究業績と将来性を持っており,今後とも日本惑星科学会の中核となって活躍することが期待できる方々でした.2014年度も2015年初めに締め切り予定で最優秀研究者賞を実施いたします.今回惜しくも受賞に至ら なかった候補者の方々で資格を有する方々のエントリは特にお断りでないかぎり自動的に継承いたしますので,よろしくおねがいします.また,惑星科学会の若手研究者の皆さんには,積極的な応募を,シニアな方々には若手の推薦をいただけるよう期待しています. 2014年4月29日 |