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選考経過の講評
2008年度選考委員会委員長 荒川政彦 (名古屋大学)
2008年12月に応募を開始しました日本惑星科学会2008年度「最優秀研究者賞」には,2009年3月3日の応募締め切り段階で,4名の方が応募されました. 4名の方について,一次審査(論文審査)を行い,4月初めに候補を3名に絞りました.次に,この3名について,研究業績,惑星科学への寄与,将来にわたって惑星科学会の中核と成って活躍が期待できるか等を,更に詳細に審査し,2009年5月17日に審査委員が集まって議論し、その後投票により1名の候補者を選びました.その結果が,運営委員会に報告され,第80回運営委員会によってその候補者が受賞者に決定されました.
受賞者氏名: 和田 浩二(わだ こうじ) 以下に,和田浩二会員ご自身および審査委員による評価等を紹介します. 和田会員は,東京大学・地球惑星科学専攻で博士学位を取得後、東京大学・新領域創成科学研究科の松井孝典教授、ついで北海道大学・低温科学研究所の山本哲生教授のもとでポスドクに従事し,現在は千葉工業大学・惑星探査研究センターで上席研究員として勤務しています.和田さんは,博士論文の研究においては,粉体計算(離散要素法)により衝突クレーターの形成過程を明らかにしてきました.その中で,和田さんは粉体計算が衝突クレーターの再現に有効であることを室内実験の結果と詳細に比較することにより証明し,さらにその粉体計算を火星クレーターのイジェクタ堆積に応用することに成功しています.一方,北海道大学に移られてからは大きく研究テーマを変えて,原始惑星系円盤におけるサブミクロンダストの衝突合体成長に関する理論的研究を開始ししました.この北海道大学においては山本哲生教授のグループにおいて研究推進の主導的な役割を果たし,北大モデルとも言われる緻密なダストアグリゲイトの衝突合体成長モデルを完成しました.このモデルに基づく研究成果は国際的にも高い評価を得ており,これまで謎の多かった原始惑星系円盤におけるサブミクロンダストから微惑星に至る道筋に対して,新たな研究の道筋を開拓したと言えます. 以下に,和田会員の代表的業績を簡単に紹介します.
業績紹介を見てもわかるように和田会員は,学生時代の研究とポスドク以後では研究テーマを大きく変えています.選考委員会では,博士論文に関係する衝突クレーター研究も高い評価を得ましたが,それ以上に北大に移って以後のダストアグリゲイトに関する研究の質の高さと学会におけるアピール度が大変に高く評価されました.北大では,個人の枠を超えてグループとして戦略的にダストアグリゲイトを研究していますが,その中で和田会員はグループの中核として存在感を示しており,国内外の学会にて極めて顕著な活躍があったと評価されました. また和田会員は個人の研究のみならず研究基盤の構築においても学会への寄与が大きいと思われます.すなわち国内の衝突研究グループの組織化とその活動の推進役の中心人物の一人として,研究会の開催等を通じてこの分野の発展に尽力してきたことも高く評価されました.さらに最近では,理論的視点から探査計画に参画・貢献しており,「かぐや」を始めとした惑星探査データの理論・モデル化などに活躍が期待されます. 以上のように,研究成果による貢献はもちろんのこと,分野を牽引するような活動による惑星科学への寄与も大きいため,和田会員は惑星科学会の最優秀研究者賞にふさわしいと選考委員会では判断しました. 2008年度に選に漏れた方も,「最優秀研究者賞」候補にふさわしい研究業績と将来性を持っておられ,今後とも日本惑星科学会の中核となって活躍が期待できる方でした.今回から申請の持ち越しも可能となりましたので,さらに研究業績及び学会における様々な観点からの寄与を重ねてこの研究者賞に再度エントリーして頂けたらと思います.最後に,惑星科学会の若手研究者の皆様方には,最優秀研究者賞への積極的な応募を期待しております. 2009年9月24日 |
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