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トップページ > ニュース > 学会賞関係のアナウンス > 選考経過の講評

選考経過の講評

2007年度選考委員会委員長 関谷 実 (九州大学)

2007年12月に応募を開始しました日本惑星科学会2007年度「最優秀研究者賞」には,2008年2月18日の応募締め切り段階で,2名の方が応募されました.

今回は応募者が2名であったため,一次審査を行ないませんでした.この2名の方について,研究業績,惑星科学への寄与,将来にわたって日本惑星科学会の中核となって活躍が期待できるか等を,詳細に審査し,2008年5月27日に選考委員が集まって話し合ったところ,総合的な評価を比較して優劣付けがたく,両名ともに受賞にふさわしいう意見が大勢でした.さらに投票を行った結果,同点になりました.募集要項では,特別な場合は受賞者を2人とすることができることになっています.選考委員会は,各委員の意見や投票結果を考慮して,今回はこの特別な場合に相当するという判断を行いました.この結果は運営委員会に報告され,第74回運営委員会で下記の2人の会員が受賞者に決定されました.

受賞者

  氏名: 生駒 大洋 (いこま まさひろ)
  所属: 東京工業大学 大学院理工学研究科 地球惑星科学専攻
  候補者についての推薦書執筆者: 中澤 清(東京工業大学)

  氏名: 長沢 真樹子(ながさわ まきこ)
  所属: 東京工業大学 グローバルエッジ研究院
  候補者についての意見書執筆者: Douglas Lin(University of California)

以下に,各受賞者のご自身および審査委員による評価等を紹介します.

生駒会員は,東京工業大学・地球惑星科学専攻で博士学位を取得し,現在は同専攻の助教です.彼は,わが太陽系にとどまらず,系外惑星も含めたガス惑星の形成過程の理論的研究で顕著な業績があります.また,原始惑星の一次大気の理論計算を基に,惑星集積過程や地球の海の起源などについて,同世代の研究者と共同で研究を行っています.最近では,巨大惑星の水素の状態方程式を実験的に求めるためのプロジェクトのリーダーを行っています.

以下に,生駒会員の代表的な業績を紹介します.

  • 巨大惑星の起源および進化,内部構造の研究
    惑星形成論者の意識がまだ十分には系外惑星へと移行していなかった頃に,コア集積モデル(水野不安定モデル)の枠組みで,系外惑星を視野に入れた巨大惑星形成のパラメータ・スタディを行いました.その一連の論文は,惑星系の多様性を理解するための必須のデータとして,発表当時よりもむしろ最近多くの論文で引用され,系外惑星研究へ多大な貢献を与え続けていると言えます.さらに,同世代のポスドクとの一連の共同研究で,微惑星の衝突破壊が巨大惑星の形成を加速することを示しました.
  • 地球型惑星の大気・海の起源の研究
    原始惑星系円盤ガスが地球型惑星に水を供給した可能性があることを同世代のポスドクとの共同研究で示しました.まず,円盤ガスを起源とする大気の構造および質量を系統的に調べ,地球サイズ程度の惑星が十分に水を獲得することができることを示しました.さらに,地球の海水のD/H比が円盤ガスのD/H比と合わないという問題に対して,これまでは考えられてこなかった海水のD/H比の長期的変化を調べ,円盤ガスが地球の海水に寄与した可能性が高いことを示しました.
  • 系外惑星の多様性の起源
    すばる望遠鏡によって初めて検出された系外惑星HD149026bの平均密度が異常に大きい原因を探り,散逸しつつある円盤からのガス供給が限られていたこと,または2つの巨大ガス惑星同士の衝突や,ガスの降着が終わってからの永年共鳴に起因する微惑星の供給により惑星の組成が変わったことなどの可能性を提案しました.その他,赤色巨星周りに検出された惑星の軌道分布の起源に関する共同研究,円盤ガスの流れの情報と円盤全体の粘性進化を組み合わせた巨大惑星の質量の多様性に関する共同研究などがあります.

選考委員会では,生駒会員の論文の質とともに,研究の幅の広さが高く評価されました.学生時代の研究を発展させた巨大惑星の形成や内部構造の研究だけにとどまらず,最近では,地球の大気・海の起源と進化の研究や生命発生機構の研究も行っています.また,生駒会員の研究成果として,同世代の研究者との共同研究が多いことも評価に値します.さらに,理論家でありながら大規模実験プロジェクトの研究代表者としての活動や,国際的な木星探査ワーキング・グループにおける活動など,惑星科学を牽引するような大きな寄与が見受けられます.以上のように,研究成果による貢献はもちろんのこと,分野を牽引するような活動による惑星科学への寄与も大きいため,生駒会員は惑星科学会の最優秀研究者賞にふさわしいと選考委員会では判断しました.

長沢会員は,東京工業大学・地球惑星科学専攻で博士学位取得後,アメリカでDouglas Lin教授のポスドク,NASA AmesでJack Lissauer博士のもとでNRCポスドク,国立天文台研究員を経て,現在は東京工業大学のグローバルエッジ研究院のテニュアトラック助教です.原始惑星系円盤が散逸するときの永年共鳴位置移動による軌道進化の一連の研究や,惑星散乱と中心星潮汐力,及び古在機構による短周期系外惑星の形成過程の研究などで顕著な業績があります.

以下に,長沢会員の代表的な業績を紹介します.

  • 円盤ガスの散逸に伴う小惑星の軌道進化の研究
    小惑星は大きな離心率と軌道面傾斜角を持っています.従来のモデルでは,これらを整合的に説明できませんでしたが,10万年以上のタイムスケールで円盤が内側から散逸していった場合や,木星により徐々にギャップが形成された場合は,永年共鳴位置の移動により,うまく説明できることを明らかにしました.
  • 円盤ガスの散逸に伴うカイパーベルト天体の軌道進化の研究
    カイパーベルト天体の内,41AU以遠のものは離心率はそれほど大きくないにもかかわらず大きな軌道面傾斜角を持っています.外縁部に残ったわずかな円盤が1億年のオーダーのタイムスケールで散逸したとすると,それに伴う永年共鳴位置移動によって大きな離心率を説明できることを示しました.
  • 円盤ガスの散逸に伴う地球型惑星形成過程の研究
    円盤ガスが散逸すると,木星によって生じる永年共鳴の位置は移動をするために,まだ円盤が残っているうちに,原始惑星は衝突をして,地球型惑星へと成長できます.円盤が残っていることにより,共鳴が通り過ぎると離心率は効果的に減少し,結果として円軌道に近い惑星が形成されます.この研究結果により,これまで言われてきた,最終的に形成される惑星の離心率が大きくなり過ぎてしまう問題を解決する可能性が示されました.また,天体の共鳴捕獲による内側への輸送により,小惑星帯の物質の枯渇や,小惑星帯からの地球への水の輸送が説明されます.木星型惑星の質量や配置が円盤散逸の時期と合わさることで,系外惑星の多様性が生まれることが示唆されます.
  • 円盤ガスの散逸に伴う系外惑星系の軌道進化の研究
    中心星が主系列へ進化する際の収縮や自転速度の増大の効果,相対論的な効果等も考慮に入れて,外側に残ったガス円盤が散逸するときの複数惑星系の軌道進化を研究しました.複数惑星系では,円盤散逸の過程で惑星間に角運動量交換が起きるために,惑星の離心率が大きく変化することを明らかにしました.また,複数惑星系では,短周期惑星が中心星との潮汐相互作用で質量放出して失われないためには,惑星形成の初期の頃の中心星の自転速度に厳しい制約条件が与えられることを示しました.
  • 軌道散乱と中心星潮汐力,及び古在機構による短周期系外惑星の形成過程の研究
    惑星間の軌道不安定で散乱された惑星が,中心星の潮汐力で円軌道化されることが提唱されていました.この方法によって不安定が起きたときに短周期惑星が形成される確率は,わずか数%と考えられていましたが,実際には,古在機構という長期の軌道進化が働くために,3割以上の確率で短周期惑星が形成されることを数値計算を通して明らかにしました.従来考えられていた円盤との相互作用による軌道進化では説明できなかった大きな軌道面傾斜角を持つHD17156bのような短周期惑星の形成過程も,この機構によるとうまく説明できます.

長沢会員は一貫して軌道進化というテーマに取り組んでいます.特に,原始惑星系円盤の散逸に伴う永年共鳴移動による軌道進化というテーマでは,太陽系の小惑星,外縁天体,地球型惑星形成過程,系外惑星の軌道進化などに適用され,世界的に見てトップレベルの成果を出しています.最近は,惑星散乱と中心星潮汐力,及び古在機構よる軌道進化という新しいテーマに取り組み,短周期惑星の新しい形成機構を提唱しています.選考委員会では,これら1つ1つの論文の質が高く,世界最先端の成果を出し続けていることが高く評価され,最優秀研究者賞にふさわしいと判断されました.

以上のように,今回選出された2人の会員は,研究者としてのスタイルはかなり異なりますが,それぞれに素晴らしい個性と将来性を持っておられ,今後とも日本惑星科学会の中核となって活躍が期待できる方であると思われます.2008年度も秋季講演会での最優秀発表賞と2009年初めに締め切り予定の最優秀研究者賞を実施します.皆様の積極的な応募をお願いいたします.

2008年6月7日

(c)1999-2006 日本惑星科学会

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