日本惑星科学会
  • ニュース
  • 学会概要
  • 入会案内
  • 学会刊行物
  • 賛助会員
  • 受付窓口
  • 会員ページ
  • 連絡先
  • 関連リンク
  • 学会運営業務
ゲスト さん、ようこそ
  • ログイン
  • 入会申請
  • 非会員登録申請
  • パスワード紛失
講演会
  • 秋季講演会
  • 惑星科学フロンティアセミナー
研究会、部会
  • 月惑星探査の来る10年
  • 衝突研究会
  • 月惑星探査育英会
  • 小天体探査研究会
  • 月科学研究会
刊行物バックナンバー

学会誌「遊・星・人」バックナンバー公開中

投稿規定その他はこちら

秋季講演会過去の予稿集

日本惑星科学会 日本惑星科学会
ニュース
学会概要
入会案内
学会刊行物
賛助会員
受付窓口
会員ページ
連絡先
関連リンク
学会運営業務

トップページ > ニュース >  学会賞 >  2006 > 最優秀研究者賞選考経過の講評

選考経過の講評

2006年度選考委員会委員長 香内 晃 (北海道大学)

2006年12月に応募を開始しました日本惑星科学会2006年度「最優秀研究者賞」には,2007年2月17日の応募締め切り段階で,2名の方が応募されました.

今回は応募者が2名であったため,一次審査を行なわず,この2名について,研究業績,惑星科学への寄与,将来にわたって日本惑星科学会の中核となって活躍が期待できるか等を,詳細に審査し,2007年5月20日に選考委員が集まって議論の後,投票で1名の候補者を選びました.その結果は運営委員会に報告され,第70回運営 委員会でその候補者が受賞者に決定されました.

受賞者氏名: 木村 勇気 (きむら ゆうき)
  所属: 立命館大学理工学部物理科学科
  候補者についての意見書執筆者: 墻内千尋(立命館大学理工学部物理科学科)

以下に,木村 勇気会員ご自身および審査委員による評価等を紹介します.

木村会員は,立命館大学のナノ構造の物理研究室(墻内千尋教授)に所属し,超微粒子の研究を結晶成長の立場から行い,超微粒子の生成機構やナノ領域での特異な物性を解明してきました.大学院博士後期課程1年で学位を取得した後は,日本学術振興会特別研究員(PD)としてさらに二年間研究を継続し,その後は日本学術振興会海外特別研究員 として,NASA ゴダード宇宙飛行センターで研究に従事してきました.木村会員は,ご自身の研究スタイルを確固たるものとして確立され,ガス中蒸発法,高分解能電子顕微鏡観察,光学スペクトルの測定などを駆使し,緻密で信頼性の高い独創的な研究を進めています.特に,実験の技術力やデータ処理能力の秀逸さに際だつものがあります.最近は,惑星科学・天文学的視点から微粒子形成に関する実験的研究を精力的に展開されています.

以下に,木村会員の代表的業績で惑星科学に関連のあるものを簡単に紹介します.

  • 隕石中に見られるプレソーラー起源であるTiCのコアを持ちカーボンマントルからなる粒子の成因をシミュレーション実験により解明した.Boudouard 反応(2CO → CO2 + C)によってCO ガスからフラーレンが生成し,カーボンマントル層の材料となる事で,コア−マントル粒子の生成過程を矛盾なく説明出来る事を示した.この結果は,今まで安定と考えられてきたCO ガスが炭素質物質の材料となりうる事を示した点でも意義深い.また,この粒子が炭素に富んだAGB 星に見られる21 μmバンドの起源となり得ることも示された.
  • 熱平衡モデルでは,硫黄より鉄の多い原始太陽系星雲中では,トロイライトが生成されると予測されるにもかかわらず,惑星間塵中ではピロタイトが支配的に観察される.このピロタイトが,鉄粒子と硫黄との固相反応により生成されうることをシミュレーション実験により示した.
  • Young Stellar Objects で観測される6.8 μm のフィーチャーは有機物でしか議論されてこなかったが,無機物である酸化カルシウム(CaO)ダストでも説明できることを初めて示した.CaO は周囲のガス環境に依存して,Ca(OH)2,CaCO3 と可逆的に変化するため,スペクトルからダストの経験した環境を議論できることも明らかにした.

これまでも,最優秀研究者賞の選考にあたっては,論文業績にならないような研究を行っている研究者をも顕彰することによって,真に必要とされる基盤的研究を奨励するという事も,賞の重要な役割のひとつと考えてきました.したがって,論文数の多寡はこれまでの選考にあたっても,さほど重きはおいてきませんでした.しかし,木村会員の発表論文数は,最近5年間だけでも国際誌に60編,うち22編が筆頭著者の論文です.「行った研究成果を印刷公表して,学界に問う」という科学者として当たり前のことを着実に実行している姿勢も高く評価されました.裏を返すと,面白い研究成果の相当な部分が日の目を見ずに埋もれている現実があります.私たち自身への警鐘と受け止めたいものです.

以上示したように木村会員の研究成果は際立ったものがあります.また,木村会員のような他の分野で育ちかつ実験的基盤を備えた若い研究者が,実験的研究を行う人材が極端に不足している日本の惑星科学界に入ってこられ,そこで新たな研究を展開されることは,大変意義深くかつ大きな期待をいだかせてくれます.

2006年度に選に漏れた方も,「最優秀研究者賞」候補にふさわしい研究業績と将来性を持っておられ,今後とも日本惑星科学会の中核となって活躍が期待できる方でした.2007年度も秋季講演会での最優秀発表賞と2008年初めに締め切り予定の最優秀研究者賞を実施します.皆様の積極的な応募をお願いいたします.

2007年6月2日

(c)1999-2007 日本惑星科学会

_MD_PICO_JUMPTOTOPOFPICOBODY

©1999-2025 日本惑星科学会