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「はやぶさ」の地球帰還に関する声明
2010年6月17日 「はやぶさ」の地球帰還に関する声明日本惑星科学会
2010年6月14日、宇宙航空研究開発機構は、小惑星探査機「はやぶさ」が地球大気に突入し、小惑星イトカワの表面物質が入っている可能性のあるカプセルがオーストラリアのウーメラ砂漠で無事回収されたと発表しました。日本惑星科学会は、小惑星サンプルリターンという惑星探査の新たな可能性を切り拓いたこの快挙に対し、心からの祝意を表明いたします。 2003年5月9日に鹿児島県内之浦から打ち上げられた「はやぶさ」は、イオンエンジンの実証試験を行いながら、2005年9月12日に小惑星イトカワに到着しました*。約2ヶ月にわたる現地観測によって得られたイトカワの実像は、平均直径が500mにも満たない小惑星に関する我々の認識を一新し、いわゆるラブルパイル天体の構造と成因を端的に示すものでした。さらに「はやぶさ」は微小重力天体への離着陸という人類初の偉業を成し遂げました。その後は様々なトラブルに見舞われ、地球との通信が一時杜絶するなど、大きな危機にさらされましたが、この困難な状況から「はやぶさ」を復活させ、奇跡的に地球への帰還を成功させた関係者の不屈の努力は、真に敬意に値するものです。「はやぶさ」ミッションの野心的な挑戦によって創り出された小天体試料採取探査という新たな流れを、より確かな潮流にしていくためには、イオンエンジンや光学航法、サンプルの採取機構やリエントリー回収方法といった技術をより確実なものとして発展させていくとともに、その技術を活かして最大限のサイエンスの成果をあげられるミッションを企画していくことが肝要だと考えます。 今後、採取できていたとしても超微量の小惑星物質をカプセルから取り出し、分析を試みるという、極めて難度の高い作業が行われようとしています。この作業を通して得られるであろう経験を踏まえ、探査機によるその場観測とリターンサンプルの高度な分析をうまく組み合わせ、太陽系創成期のかけがいのない知見を手にできる科学探査を企画し、そのためのインフラとネットワークを緻密に企画・整備していくことが、惑星科学コミュニティに課せられた大きな課題だと認識しています。 日本惑星科学会員は、1993年の「小惑星探査ワーキンググループ」発足以来、各種計測機器開発や探査機運用への協力を通じて、「はやぶさ」ミッションに携わってきました。今後とも、日本惑星科学会は、理論・実験・観測・数値シミュレーション・分析といった広範な手法の統合の場として、惑星探査を通した太陽系と地球の起源と進化の解明に向けて、一層貢献していく所存です。 *https://www.wakusei.jp/news/announce/2005/2005-09-17/appeal.pdf |
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