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トップページ > ニュース > 学会からお知らせ > 2006 > 2006-09-03 > 冥王星はどのような天体か?

冥王星はどのような天体か?

2006 年1月に打ち上げられた NASA の New Horizons ミッションは、世界で初めて 冥王星と TNOs (Trans-Neptunian Objects) の 探査を行います。 この New Horizons 探査機が 9年以上の歳月をかけて 2015年に 冥王星を訪れた時、我々はどのような姿の天体を目にするのでしょう?

冥王星に最も似ている天体の候補として挙げられるのが、ほぼ同じサイズ(〜2000km)を 持つ、海王星の衛星トリトンです。



ボイジャー探査機によって撮像されたトリトンの表面


人間の目に見える可視光よりも波長の長い赤外域で観測を行うと、 天体表面を覆う物質の違いを反映した、様々な「色」が ついていることがわかります。こうした赤外域の「色」を分析した結果、 冥王星とトリトンの表面組成は非常によく似ていることが判明しました。どちらも 窒素・一酸化炭素・メタンなどの氷で覆われているのです(文献[1,2])。 またトリトンよりも内側をまわっている海王星の衛星が、海王星の 自転と同じ方向に周回しているのに対して、トリトンは逆方向に周回しています。 このため、「トリトンはかつて単独の TNOs として太陽を周回していたが、なにかの きっかけで海王星に捕獲されて衛星になったのだろう」と 考えられています(文献[3])。冥王星とトリトンが、よく似たサイズ/表面組成を 持つ TNOs であるならば、その表面の様子もある程度似ているのではないかと 推測されるわけです。

冥王星には、自分の大きさの半分にも及ぶ巨大な衛星 カロンがあります。 カロンの表面は、冥王星やトリトンとは違って主に普通の水(H20) の氷で 覆われています (文献 [4])。 冥王星とカロンは、隣り合っているにも関わらず、その表面組成が全く異なっている のです。この違いは、どこから生じるのでしょうか? 窒素は我々の呼吸する空気の8割を占める気体ですが、マイナス 230 度以下にもなる 極低温の冥王星表面では、そのほとんどが固体として表面に凝結しています。 しかし窒素氷は水(H20) の氷に比べると昇華温度がずっと低いため、わずかながら 昇華していき、冥王星やトリトンの周囲に非常に希薄な大気を形成しています(文献[5])。

現在では、「カロンや、それ以下のサイズの TNOs では表面重力が弱いため、 窒素やメタンのような揮発性の高い物質は、すこしづつ昇華して宇宙空間に 失われてしまった。一方、冥王星やトリトンのサイズになると昇華した物質を 大気として保持することができるため、現在でも表面に揮発性物質が存在する」 という説が、主流となっています。 実際、セドナや 2003UB313 のような 巨大な TNOs の表面には、 冥王星と同様に揮発性の高いメタン氷が存在することが確認されています (文献[6,7,8])。 このように、表面組成という観点からは、冥王星が他の TNOs と異なる特別な存在だと 主張することは困難になってきました。

また最近の観測により、 多くの TNOs が、 非常に大きな衛星を持つ(あるいは連星系を成している)ことが明らかになって きました(文献[9])。カロンのような巨大な月を持っているのも、冥王星だけでは ないのです。一方、冥王星には 最近 新たな衛星が2つ同時に発見され、 Nix/Hydra と名付けられました。 複数の衛星を持つのは冥王星だけなのでしょうか? それとも、やはり 他の TNOs にも複数の衛星が存在しているのでしょうか?

惑星として位置付けられるかどうかに関わらず、冥王星はこれからも、 太陽系形成過程を解き明かすための鍵を提供してくれる、興味深い天体で あり続けるでしょう。

文献

[1] Owen,T.C. et al. 1993,Surface ices and the atmospheric composition of Pluto,Science,vol.261,no.5122,p.745-748.
[2] Cruikshank,D.P.et al. 1993,Ices on the surface of Triton,Science,vol.261,no.5122,p.742-745.
[3] Agnor,Craig B.;Hamilton,Douglas P. 2006,Neptune's capture of its moon Triton in a binary-planet gravitational encounter,Nature,Volume 441,Issue 7090,pp.192-194
[4] Buie,M.W.;Cruikshank,D.P.;Lebofsky,L.A.;Tedesco,E.F. 1987,Water frost on Charon,Nature,vol.329,p.522,523.
[5] Sicardy,B. et al. 2003,Large changes in Pluto's atmosphere as revealed by recent stellar occultations,Nature, Volume 424,Issue 6945,pp.168-170
[6] Brown,M.E.;Trujillo,C.A.;Rabinowitz,D.L. 2005,Discovery of a Planetary-sized Object in the Scattered Kuiper Belt,The Astrophysical Journal,Volume 635,Issue 1,pp. L97-L100.
[7] Barucci,M.A. et al. 2005,Is Sedna another Triton?,Astronomy and Astrophysics,Volume 439,Issue 2,pp.L1-L4
[8] Licandro, J. et al. 2006,The methane ice rich surface of large TNO 2005 FY_9: a Pluto-twin in the trans-neptunian belt?,Astronomy and Astrophysics,Volume 445,Issue 3,pp.L35-L38
[9] Stephens,Denise C.;Noll,Keith S. 2006,Detection of Six Trans-Neptunian Binaries with NICMOS: A High Fraction of Binaries in the Cold Classical Disk,The Astronomical Journal, Volume 131, Issue 2, pp. 1142-1148.
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