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=第三段階の主旨と進め方

+「月惑星探査来る10年」第二段階提案者各位

月惑星探査来る10年」の検討活動は,みなさんからいただいた提案を基に第三段階に入りました.ここでは,第三段階の主旨と進め方を説明し,特にその第一工程となる「セクション別検討会」について提案いたします.

 後発でさまざまな学問分野を内包する日本の惑星科学コミュニティは,「ボトムアップで暖められた探査提案を厳しい議論と共同作業を通じて集約し,コミュニティとして推すプロジェクトを選定する」という経験をこれまでほとんど積み上げられていません.しかし,国の宇宙科学予算の逓減により,特に中・大型衛星の打ち上げ機会は減少し,そのわずかな機会を巡って他分野との厳しい競争に直面しています.この競争を勝ち抜くには,魅力があり他分野に対しても十分な説得力を持つミッションをまとめ上げ,工学系や他分野の協力を得ながら,惑星科学コミュニティが一丸となってそれを推進していく態勢が必要です.今後十数年というタイムスパンで考えた場合,惑星探査の中・大型衛星はせいぜい1機か2機しか上がらないと覚悟すべきです.いくつかの提案は小型衛星ミッションあるいは国際協力ミッションとして位置づけるのが妥当でしょう.コミュニティとして,今後の探査の位置づけと進め方を明確にする中期ビジョンの構築と共有が喫緊の課題と考えます.

 そこで,第三段階では,第一段階におけるトップサイエンスの議論と第二段階でのみなさんからの提案を素材とし,第二段階パネル委員のコメントを踏まえつつ,それらを発展的に昇華させ,日本の惑星科学推進の「中期ビジョン」(MRV)を共有し,そのビジョンに位置づけられた「惑星探査ミッション」を選び,整合性があり説得力のある「ミッション・コンセプト」(MC)を仕上げることを目標とします.(末尾にMRVとMCの記載内容を示します.)

 第三段階は次のような工程で進めていきたいと考えています(ただし,第二工程以降は,それ以前の工程の展開によって一部変更する可能性があります).

:第一工程
大テーマを複数設定し,各大テーマを柱とするセクションを,提案者を中心に,関心のある惑星科学研究者や他分野の有識者などに参加いただいて構成し,「セクション別検討会」を実施する.そして,セクション毎に研究推進のMRVとその下に位置づけられた惑星探査ミッションのMCの一次案(「科学的目的」と「概要・特徴」の整合性に留意)を作成いただく.

:第二工程
各セクションから提出されたMRVとMCの一次案を,第三段階パネル委員が検討し,コメントを返す.コメントには問題点/不十分な点の指摘,参考となるであろう各委員の経験の披瀝,今後の進め方や協力を仰ぐべきキーパーソンの紹介などを想定.なお,MRV一次案については将来計画委員会でも検討/評価をお願いし,同委員会の検討にも活用いただく予定.

:第三工程
提案者は第二工程のコメントを踏まえて,MC一次案のポリッシュアップを図り,整合性と説得力を強化したMC二次案(「体制・経費・スケジュール」の明確化に留意)を作成する.この工程では,第一工程でのセッションの枠を取り払い,複数の提案の更なる集約や,工学系や他の宇宙科学探査経験者の参加の促進,検討体制の強化を進めていただく.

:最終工程
提出された各MC二次案に対して,第三段階パネル委員より,総合的な評価とワーキンググループ化に向けたアドバイスを行う.

まずは第一工程ですが,第二段階提案者であるみなさんに対して以下の2つの大テーマを柱とするセクション別検討会に参加いただくことを提案します.

:大テーマ1
月惑星の構造と進化の比較学
:大テーマ2
生命に至る宇宙物質の進化学

注:なお,「地球型惑星大気・磁気圏探査」については地球電磁気・地球惑星圏学会が主催する将来計画分科会において,別途,検討される予定です.

各提案者は,少なくともどちらかのセクションに属して,MRVとMCの検討に参加いただきます(両方のセクションに参加いただくことは歓迎します).各セクションで必ずしも1つのミッションに絞り込む必要はありませんが,策定いただくMRVの中に各ミッションを位置づけ,それぞれがフラグシップ的な中・大型衛星ミッションをめざすのか,小型衛星ミッションや国際協力ミッションを狙うのかを明確にしていただきたいと思います.

 以上の第三段階の主旨と進め方については,やや唐突に提示されたものとの印象を持たれ,この程度の説明では十分に了解いただけないかと思われます.そこで,宇宙科学研究所で開催される月惑星シンポジウム(8月3日)において,惑星探査に対する状況認識と視点の共有を目指して,『「月惑星探査来る10年」第三段階に関する説明会/意見交換会』の開催を計画しています.ぜひとも,みなさんに参加いただき,議論願えればと思います.

 第一工程の両セクションへの参加募集と分科会の日程については((<お知らせ>))をご覧ください.お忙しいところ恐縮ですが,コミュニティとして素晴らしいミッションを作り上げていく共同作業に,引き続きご参加いただくよう衷心からお願いいたします.

 なお,参考として,第三段階パネル委員が想定している中期ビジョン(MRV)とミッション・コンセプト(MC)の記載すべき内容(項目)と留意点を次ページに掲げます.MCの留意点については,みなさんの第二段階提案書を第三段階パネルの各委員が読ませていただいた上で書いたことを申し添えます.


++中期ビジョン(A4で1枚の図)
20年後までの惑星探査とその周辺研究の展開を描いたロードマップ

++ミッション・コンセプト(A4で2ページ以内)
ミッション名,提案代表者

A.科学的目的(10行程度,もしくは数項目)

B.概要・特徴(各1行〜数行)
(1) 衛星軌道
(2) 搭載研究装置のリスト
(3) 重量・サイズ
(4) その他の特徴(親子? サンプルリターン? 耐熱? 冷却?)

C.体制・経費・スケジュール
(1) 推進体制(国際共同?)
(2) 大雑把な経費
(3)大雑把な年次進行計画

:++ミッション・コンセプトの留意点
簡潔な中にエッセンスが凝縮されていること.A〜C間には論理的整合性が求められる:

Aでは「それが分かるとどのような新たな地平を切り開けるか」に関する説得力,Bでは「Aを達成する上での必然性」に関する明快な説明,Cでは「ミッションを実現するための諸条件」に関する現実的な算定がそれぞれ求められる.特にBとCは具体的かつ実体を伴った記述が必須.全体を通じて,「書けることを書いた」ではなく,整合性と説得力がある明晰な「コンセプト」であることが必要条件.提案者以外の人が読んで,「これならできそうで,おもしろそうだ.本気で検討しよう」と思えるようなものになっている必要がある(そうでなければ,その先に進まない).この段階では,サイエンスの問題解決をもたらすブレークスルーをめざして計画されていることが最優先事項であり,フィジビリティは世界を見渡し,国際協力も視野に入れて判断すべきもので,ワーキンググループ化後の課題である.